大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和48(あ)2723 決定

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人岡崎耕三、同平松掟、同奥津亘の上告趣意は、被告人の警察官に対する自

白調書は、警察官が、被害者Aの身体の傷口が一か所であることを知りながら、そ

の取調べにあたり切り口が二か所ある同人の着衣を被告人に示して質問し、被告人

をして被害者の身体の傷口が二か所あると誤信させて被告人の殺意のあつたことの

自白を求めた結果作成されたものであり、したがつて、右自白調書は警察官の偽計

による被告人の自白を記載したものであるから、証拠とすることができないのにも

かかわらず、右自白調書に任意性があるとした原判決の判断は、憲法三八条二項に

違反するというのである。

しかし、原判決の説示する本件捜査の経過のもとで警察官がその取調べ中に所論

の証拠物を被告人に示したからといつて不当な取調べ方法であるといえないとして

所論調書の任意性を肯定した原判断は相当であるから、所論違憲の主張は、前提を

欠き、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主

文のとおり決定する。

昭和四九年四月一八日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 岸 盛 一

裁判官 大 隅 健 一 郎

裁判官 藤 林 益 三

裁判官 下 田 武 三

裁判官 岸 上 康 夫

- 1 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!